WWWを検索 OBT内を検索
 INDEX // Step1:ベーシックグッズ // Step2:イクイップメント // Step3:ウェアリング // Step4:フットウェア
 Step5:パッキング // Step6:キャンプサイト //  Step7:食事 // Step8:ナイトライフ // Step9:キャンプライフ
 Step10:トレッキング // Step11:サバイバル // Step12:撤収 // Step13:メンテナンス

メインイベント

 

フリーズドライ食品

 かつては、「フリーズドライ」というと、代用食的な代物だったが、普段の食事にしても十分満足できるレベルになった。うまく使えば、フィールドで豪華なコース料理を楽しむ事だってできる。

 

レトルト食品

フリーズドライ食品同様、飛躍的な味の進歩を見たレトルト食品。チョコレートやサプリメントなどの行動食も充実して、ほんとに身軽になった。

 

事前準備

 料理にこだわるなら、やはり、自宅で仕込んでおいて、フィールドでは火を通すだけといった形がベスト。ちなみにぼくの定番はタンドリーチキン。カレー粉とヨーグルトに漬けて、ジップロックで密閉しておく。

 

調味料

 塩と胡椒は、35mmフィルムケースを応用した専用ケースに。味噌は、タッパーに。ハーブ類はジップロック、さらにコンソメなどをまとめて、調味料袋に収納。

 マーガリンやバター、ジャムなどのゲル状のものを携行するには、詰め替え可能なスクイーズチューブが便利。

 普通のオイルを小分けしてザックに入れておいて……気が付いたら蓋が外れてオイルまみれ。なんてことを心配する必要がないスプレー式オイル。ガーリック風味などがついているものもあって重宝だ。

 

ガソリンストーブ

 まず最初に、ポンピングノブのロックを外して(時計と反対方向に回す)、ポンピングできる状態にする。ロック機能のついていないものはそのままポンピング開始。

 ガソリンストーブの火を安定させるのは、「これでもか!」というくらいポンピングするのがコツ。最低50回くらいが目安。高地や寒冷地では、回数をもっと増やす。

十分にポンピングできたら、ジェネレーターのバルブを開く。最近のモデルは、このバルブが火力調節バルブを兼ねていることが多い。

 次に火力調節バルブを開いて着火すればOK。火が安定しないようなら、火がついたまま、ポンピングしてやる。このとき、ストーブを傾けたりすると、ガソリンがこぼれて引火するので、しっかり水平に保持してポンピングすること。タンクが別体式のストーブだと、そのような心配がないのがメリット。

 ポンプ内のパッキンが劣化しないように、時々、専用のオイルを注してやる(写真のスポーツスターではノブの取り付け部分にオイルを注すためのホールがある)。

 こちらは、アルピニストを中心に絶大な人気を誇るMSR「ウィスパーライトインターナショナル」。小型軽量でありながら大火力が魅力。ガソリンだけでなくケロシンも使えるマルチフュエルも人気の秘密。ガソリン限定だがさらにコンパクトな「シマーライト」もある。
野外道具屋で購入>>>>

 

ガスストーブ

 ガスカートリッジストーブのオペレーションをわざわざ解説する必要もないだろう。大切なのは、カートリッジをゴミとして処理するときに、残ガスを必ず放出させること。かつては、タンクを石などで叩いて穴を開けて放出していたが、今はバルブキャップに残ガス放出用の爪がつけられているので、それでバルブを押し込んで最後までガスを放出する(写真はプリムスのカートリッジ)。

 450ccの水を90秒で沸騰させるという驚異的な熱効率でコンパクトストーブに革命を巻き起こした「ジェットボイル」。機密性が高く、倒しても水がこぼれないカップなど、斬新なアイデアがたくさん盛り込まれていて、たしかに使いやすい。2004年度バックパッカーマガジンのエディターズチョイス賞に輝く。

 大き目のマッチ箱ほどの大きさにまとまり、しかも2700kcalの大火力を持つziipoポケットストーブ。マイクロサイズのガスストーブ開発の火付け役となった。ちょっとしたハイキングにでも気軽に持っていく気になる。
野外道具屋で購入>>>

 

水の確保

 沢水などの流水をそのまま安心して飲める時代ではなくなってしまった。最早ハンディ浄水器はアウトドアの必携装備だ。

 浄水器も今や必携の装備になりつつある。手の切れるように冷たい沢水を救ってそのまま飲むのが山行の大きな楽しみの一つだったが、それもなかなかかなわなくなった。写真は軽量コンパクトながら浄水能力の高いMSR「スウィートウォーター」原虫、バクテリアのほとんどを浄化できる。
野外道具屋で購入>>>>

 

後始末

 食器などを洗って、その水を排水するときは、沢に流したりせずに、水源から離れた場所で地面に浸透させる。

 

オートキャンプ

 オートキャンプなら豪華ディナーもお手のもの。

 

 

 

Step7 : 食事

[ INDEX ] 
1.食事はキャンプのメインイベント 2.食糧計画 3.フリーズドライ食品
4.レトルト食品 5.事前に準備する 6.行動食 7.調味料
8.ガソリンストーブの使い方 9.ガスストーブの使い方 
10.水の使い方 11.水の確保 12.後始末
FOR EXAMPLE : 13.オートキャンプの場合 14.ツーバーナーの使い方
15クマ避けのデポ

 

■食事はキャンプのメインイベント■

 朝食にはタイムを浮かべたスープにパンケーキ、散策途中の昼食にはフリーズドライのピラフに紅茶、夜はちょっと贅沢に味噌づけしておいた肉のステーキと散策中に採ったキノコのスープ、それにバーボンをちょっぴり……。フリーズドライやパック技術の向上によって、インスタントフーズも普通の食事に遜色のないものが多種出回るようになりました。軽く、調理も簡単なこれらの食品を活用してもよし。また、家庭で工夫して加工した食品をアウトドアで試すもよし。食事は、キャンプでの大きな楽しみの一つです。だからこそ、自分なりの工夫で楽しみたいものです。

 

●食糧計画

 登山では、食糧計画というと、行程分の細かいメニューに予備食糧まできっちりと決めて無駄のないように用意するのがあたりまえですが、この項は、もう少しソフトな志向のアウトドアを対象にしているので、それほど厳密に食料計画を練る必要はないでしょう。もちろん、あれもこれもと欲張って詰め込みすぎると、ザックに収まりきらなくなったり、キャンプを撤収して帰るときに大量の余りものを持ち帰るはめになることもあるので、そのあたりはある程度見切りをつけなければならないわけですが……。

 食料計画は、何を目的として、どのようにアウトドアで過ごすかということとリンクしています。

 ずっとキャンプに停滞して豪勢な食事を楽しもうというのなら、朝から豪華メニューで酔いつぶれていてもいっこうにかまわないでしょう。また、朝は早起きして、ちょっと遠くまでトレッキングして、夕方キャンプに戻ってディナーといったオーソドックスなキャンプの一日を想定すると、3度の食事全てに手間のかかる料理を作るというのは合理的ではありません。

 アウトドアでは立派なキッチンがあるわけではありませんから、自宅で調理するよりもかなり手間がかかることを、まず念頭に置いてください。行きあたりばったりで考えるよりは、ある程度の計画をたてておいたほうが、時間を節約して、他の楽しみにさける時間も増やせるというものです。

 朝食はなるべく消化が良くて、調理も簡単なものというのがセオリー。スープにパン、コーヒーといったところでしょうか。トレッキング中にお腹が空いたら、温かい紅茶に、チョコレートやビスケットなどの行動食でティーブレイク。昼食はトレッキング先で簡単に作りたいので、フリーズドライのピラフや雑炊。

 そして、夜はレトルトのゴハンを温め、それにレトルトのカレーやシチュー、さらに味噌づけの肉の照り焼きなどを添えてちょっと豪華に。といったところが、ぼくのキャンプ生活の代表的なメニューです。

 毎度毎度同じメニューでは飽きてしまうので、朝のスープにハーブを散らしたり、昼食に途中で採った木苺のデザートを添えたり、夜は現場で仕入れた海の幸や山の幸を加えて、といった具合に、その時々で、思いつきの工夫を凝らしています。

「自然の中では何を食べても美味しい」なんてよく言われますが、なんの工夫もない冷めたバーベキューでそんな風に言ってのけられるのは、よほど寛大なできた人間なのでしょう。自然の中でもどこでも、不味いものは不味いと思いますよ、ぼくは。グルメ張りに凝らなくても、少しは味にもこだわりたいものです。とくに、秋口から冬にかけての夕食は、外気も下がって冷めやすいので、できたての温かいうちに食べられるメニューがいいでしょう。キャンプサイトのレイアウトの項で、アウトドアダイニングは、なるべくテントを風避けにしたほうがいいと紹介しましたが、食事が冷めないようにといった意味もあります。

 また、夏場の調理でとくに注意をしたほうがいいのは、ランタン等の光源を調理中の鍋に近づけすぎないことです。蛾や羽虫のダシを効かせた料理が特別お好みというのなら、話は別ですが……。それから、夜に調理する場合は、両手が自由になるヘッドランプがとても便利です。

・追記

 忙しい日常生活の中では、朝食はできるだけ簡単に済ませるか、あるいは朝食抜きという人が多いと思います。

 食事は、いわば肉体という機械を動かすための燃料です。日中のアウトドア活動を控えて、朝食が摂り足りないと、たちまち燃料切れを起こすことになります。登山の世界で『シャリバテ』といわれる状態ですね。どうしても、朝は食事の仕度がおっくうになため、つい簡単に済ませて、途中でシャリバテといったケースになりやすいものです。ぼくの場合は、朝食は胃にやさしいスープや味噌汁を主体にして軽く取り、動き出してから、小休止のときなどに、カロリーメイトなどの行動食を随時とる形にしています。トレッキング途中での昼食では、疲労回復のために、砂糖をたっぷり入れた紅茶を飲みます。そして、夜のカロリー補給は、もっぱらアルコールで……。

 

●フリーズドライ食品

 調理済みの食品や食材を急速凍結して脱水乾燥したものがフリーズドライ食品。水や湯を加えることで簡単に戻せ、また軽く、長期の保存ができるのが特徴で、アウトドアでの食糧としては、筆頭に上げられます。

 かつては、そのコンパクトさと軽さは大いに魅力があるものの、味のほうがいまいちで、どうしても荷物を軽量化したい登山の場合以外ではあまり活用されていませんでした。でも、最近のものはずいぶん改良が進んで、普通に作ったメニューとほとんど遜色ない味になりました。ピラフやドライカレー、雑炊などの単品メニューの他、プレカットされた野菜類、果物類、それに水で戻す酒の粉末まであります。全てのメニューをフリーズドライ食品にすれば、とくに長期のキャンプでは大幅な荷物の軽量化が可能になりますが、目の飛び出るようなコストがかかってしまうでしょう。フリーズドライ食品は、調理に手間をかけずに高カロリーのものをとりたい行動中の昼食やデザートに活用するといいでしょう。

・追記

 ぼくがアウトドアメニューによく加えるフリーズドライ食品は、『ジフィーズ』と『レガー』ブランドの製品です。ジフィーズは、昔からある国産のもので、どちらかといえば軽量化重視の登山向けといえるでしょうか。イワタニから発売されているレガーシリーズは、とくに味のクオリティを追求する人にお勧めです。

 食品の傷みが早い夏場などは、こういった食材を有効に使って、ディナーを豪華に演出しています。

 

●レトルト食品

 調理済みの食品を耐熱パックし高温殺菌したものです。すでに家庭用食品としてもお馴染みなので、味の点でも満足のいけるものが多く、安心して持っていけます。ソロキャンプでレトルトを入れられるほどの大きさのコッヘルを持っていないような場合は、直接コッヘルにあけて調理します。また、レトルトを温めるために使った水は、食器を洗うときに使用します。レトルト食品の難点は、重いことと、使用済みのパックがけっこうなゴミになることですね。

 レトルト食品は、カレーやハンバーグ、シチューなど比較的加工が面倒なメニューが用意されているのがうれしいところです。これらを一からキャンプ地で作ろうとすると、手間と時間がかかるので、そのかわりにレトルトを使い、これをベースに手を加えるといった方法がお薦めです。例えば、マカロニをゆで、これにレトルトのクリームシチューを加え、さらに溶けるチーズをのせて、これを焚火のおきの中にしばらく入れて、はい、本格マカロニグラタンの出来上がり、といった具合ですね……。

 

●事前に準備する

 アウトドアでは、水も自由に使えないし、使いやすいシンクやレンジもありません。まな板もなければ、ナイフは小さく使いにくい……そんな制約の中で、無理して野菜を刻んだりするのは面倒だし、時間の無駄というものです。

 そこで、何か本格的なメニューを考えているなら、事前にプレカットや仕込みを済ませておくのがセオリーです。そうすれば、現地では最小限の手間で調理でき、効率的だし、現地でもたもたやるより味も間違いなく美味しく仕上がること請け合いです。

 野菜の場合はプレカットしてしまうと、痛みやすくなってしまうので、当日か2日後くらいまでに消費することを目安にします。また、トマトやキュウリのような果菜はプレカットするわけにはいかないので、これは洗っておいて調理の際にカットすればいいだけにしておきます。

 肉や魚は、やはり事前に食べやすい大きさにカットして、塩、コショウし、味噌や酒粕などにつけて持っていくといいでしょう。もちろん、エキスが染み込んだ味噌や酒粕も有効活用します。

 最近では、家庭用の薫製セットなども出回っているので、こういったものを使って事前に加工しておくのもいいでしょう。

・追記

 シチューやカレーといったメニューのときに、あらかじめ冷凍しておいたものを持参して、夕食時に火を入れて食べるといった方法もあります。オートキャンプなら、クーラーバックに冷凍食品を入れておけば2,3日は問題ありません。ザックに入れていく場合でも、最近は、性能のいい保温保冷バッグがあるので、これを活用すると丸1日は持ちます。

 

●行動食

 運動の途中、糖分のあるものを口にすると、疲れがとれて活力が甦ります。トレッキングの途中や、テントの設営などで疲れを感じたら、チョコレートやビスケット、あるいはカロリーメイトなどの栄養補助食品を口にするといいでしょう。甘い飲物でも同じ効果が得られます。

・追記

 新田次郎の小説『孤高の人』では、主人公の加藤文太郎が、ポケットに甘納豆をたっぷり入れておき、それを歩きながら食べるシーンが出てきます。これは、実際の逸話だそうですが、カロリーが高く、消化のいい甘納豆は、行動食としては理想的なものの一つです。ネイティブアメリカンは、木の実や野菜を動物油で練り合わせて固めたペミカンという極めて合理的な行動食を使ってきました。モンゴルの遊牧民は、お茶にバターをたっぷり入れて休憩のときに飲みますが、これも合理的な行動食の一種と考えていいでしょう。シャリバテに陥ってしまうと、体力が回復するまでにそうとう時間がかかります。アウトドアで力を十分に発揮して、思う存分エンジョイするためには、行動食を適時摂取して、シャリバテを事前に予防するのがポイントです。

 

●調味料

 塩、コショウ以外にも、パック入りの醤油やマヨネーズ、ジャム、バター、それに好みのハーブなどを用意しておくと、ただのスープやレトルト食品にほんの少し加えるだけで、変化がつけられ、美味しく食べられるものです。

 ジャムやバターは中味の入れ替えが可能なスクイーズチューブに必要量を入れておくのがいいでしょう。ハーブは乾燥したものをジップロックのような密閉できるポリ袋に入れておくと香りが長持ちします。

・追記

 ぼくは、塩、コショウを35mmのフィルムケースに適量が振り出せる蓋をつけたものに、砂糖はφ15cmほどのプラスチック製密封容器に、乾燥したタイムやパセリなどのハーブをジップロックに入れて常備しています。他の調味料は、メニューに合わせて、適時スクイーズチューブや密封容器に入れて持参します。炒めものなどをする場合、油が必須ですが、普通の液体オイルを携行するのは、けっこうやっかいなものです。今までは、小型の燃料用ボトルに普通のサラダオイルを入れていましたが、使っているうちにゴムのパッキンが劣化して油を浸潤させてしまうのが難点でした。最近スプレー式のオイルを使っています。これは、ザックに入れて振り回しても漏れる心配がないし、手軽だし、油を使いすぎる心配がないのもメリットです。

 

●ガソリンストーブの使い方

「ガソリンストーブは極めて引火性の高い燃料を使う上、プレヒートなどの手順が複雑で、初心者には取り扱いが難しい」と紹介されている入門書が多々ありますが、そう決めつけてしまうのはナンセンスです。今のガソリンストーブは、プレヒートを必要としないものがほとんどだし、取り扱いもさほど難しくありません。

 ガソリンストーブの構造はいたって簡単です。ガソリンを入れるタンク、それにタンクの内圧を高めてジェネレーターにガソリンを送り出すための加圧ポンプが付き、それがジェネレーターで気化されバーナーに達する。火がついてから後は、ジェネレーターが温められて負圧を生み、ガソリンがバーナーに供給され続けるという仕組みです。ジェネレーター基部にはカットオフバルブが付き、これが火力調節バルブを兼ねているものと、火力調節バルブは別にあってカットオフバルブは点火と消化専用のタイプがありますが、いずれも、使用法には大差ありません。

「ガソリンストーブは使いにくい」という話は、ほとんどがポンピング不足で火力が安定しないことに由来します。とにかく、これでもかというぐらい(回数にすれば50回以上)ポンピングしてやれば、火力はすぐに安定します。ポンピングノブはふつうネジこみ式のロックがかかっていますから、これを時計回りと反対に回して解除し、引くときにはエア吸入口(ノブの中心の小さい穴)を押さえず、押すときにはこの穴を塞いでノブを押し込むようにします。十分にポンピングができたら、時計回しでノブをロック。バルブを開放して、バーナーに火をつければOK。はじめはくすぶったりしますが、次第に火力は安定してくるはずです。もしいつまでも火がくすぶっているようなら、ストーブをしっかり押さえて、そのままポンピングしてやれば安定するはずです。

 ガソリンストーブはほとんどノーメンテナンスで使えます。バーナー部にスープなどをこぼして目詰まりしてしまったら、ゴトクを外し、バーナー部をばらして掃除してやればOK。構造がシンプルなので、クリーニングも容易なわけです。製品によっては、カットオフバルブを開放方向に回すとバーナーの内部に仕込まれた針が上がってバーナーをセルフクリーニングする機構がついたものもあります。このタイプなら、それでときどきクリーニングしてやれば、常に安定した炎で調理することができます。

・追記

 ぼくは、長い間、コールマンのスポーツスターというガソリンストーブを愛用してきましたが、こいつは、最近、現役を引退させて、代わりに燃料タンクとバーナーが別体になったコールマンのPeak1APEXというモデルを使いはじめました。スポーツスターは20年あまり使って、トラブルは一度もありませんでしたが、APEXに比べるとかなり重さがあります。APEXのほうは軽量コンパクトな上、火力もスポーツスターを上回っています。現役引退といっても、それは、ザックに入れて持ち歩くというシチュエーションに限ってのことで、オートキャンプなどではまだまだ元気に働いてくれています。

・追記
  ちょっと裏技になりますが、寒冷地や高所で初期ポンピングの効果が出にくい場合などは、火をつける前に、バルブを開け、ストーブを傾けてわざとバーナー部の受け皿にガソリンを漏れさせ、それに火をつけてプレヒートするという方法がよくとられます。『Complete Walker』の中で、コリン・フレッチャーは、「火つきが悪いときは、ストーブにガソリンをまぶして、離れたところからマッチに火をつけて投げ入れろ」なんて、ワイルドなプレヒートの方法を紹介しています。これは、さすがに、あまり真似しないほうがいいと思いますけど……。

 

●ガスストーブの使い方

 ガスカートリッジストーブはたしかにガソリンストーブよりも使用法は簡便だし、燃料漏れなどもないので、安全性も高いといえるでしょう。ですが、「ガソリンストーブに比べてガスカートリッジストーブのほうが初心者向け」と短絡的に言い切ることには賛成できません。それぞれに適したシチュエーションがあり、自分がするキャンプはどちらに当てはまるかを見当して選ぶのが賢明でしょう。ベテランキャンパーなら両方のタイプを持っていて、それぞれを使い分けているのが、ふつうです。ガソリンストーブは低温や高所といった環境でも大きな火力を維持でき、長期のキャンプでも予備燃料がさほどかさばりません。ガスストーブのほうは、火力の点でややガソリンストーブにゆずるりますが、使用法が簡単で、本体はガソリンストーブより軽量コンパクトです。短期のキャンプで予備のカートリッジが少なければかさばらないし、重量も軽く押さえられますが、長期の場合は、予備のカートリッジがいくつも必要で、これが負担となります。日帰りのトレッキングや短期のキャンプでは、ガスカートリッジストーブのほうが有利になるわけです。

 ガスカートリッジストーブの使用法は、説明するまでもないほど簡単です。カートリッジにジェネレーターをねじ込み、さらにバーナーをねじ込むだけで準備完了。圧電式の着火装置付きのものなら、バルブをあけて圧電スイッチを押せば着火します。圧電装置がないタイプなら、吹きだしたガスにマッチかライターの火を近づけるだけでOKです。火をつければ、それだけで火力が安定し、あとはバルブの開閉だけで火力調節が可能です。

 かつては、低温時や高所では液化されたガスの気化が弱まり火力が低下するのがこのタイプのストーブの弱点でしたが、ガスの組成を変えたり、バーナー付近の熱をカートリッジに伝導して暖めて気化を促進するパワーブースターを装着するなどして、ほとんど問題なくなっています。

・追記

 ガスカートリッジストーブは、カートリッジがゴミになる上、なかなか効率よく使い切れずに、半端に残ったカートリッジと新品のカートリッジをいっしょに持っていくといったことになりやすいのが難点です。ぼくは、そんな場合は、燃料消費の少ないランタン用として残量の少ない方を使い、新品をストーブ用として使うようにしています。環境のことを考えると、処理の面倒なゴミとなるカートリッジをあまり使いたくないのですが、どうしてもショートトリップやトレッキング時のお茶沸かし用という場合には、手軽なガスストーブをチョイスしてしまいます。カートリッジが再利用できて、アウトドアショップに持ちこめば、その場で再充填できるようなシステムができればいいのですが……。

 寒冷な条件下での使用を想定して、プロパンのような気化率の高い燃料を配合した寒冷地タイプのカートリッジがほとんどのメーカーで用意されています。通常のブタン100%燃料よりカロリーも高いので、ぼくは通常の環境下でも、こちらのタイプのカートリッジを多用しています。

 

●水の使い方

 整備されたキャンプ場でも、それぞれのサイトにまで引水してあって、家庭で水を使うように手軽に使えるわけではありません。カンティーンもしくはポリタンなどに水場から水を汲んできて、それを使うのが一般的です。また、整備されたキャンプ場以外の場所でキャンプする場合は、自然の湧水や沢の水などを使うことになりますが、これとて同様にサイトまで必要量を運ぶ必要があります。

 限られた水を上手く使うには、リサイクルを考えて無駄をなくすことがポイントです。例えば、レトルトを暖めるのに使った湯はそのまま捨てないで、食器や手洗い用にリサイクルすれば、いちいち炊事場へ汚れものを運ぶ必要もないし、汚れ落ちも冷水を使うよりはいいはずです。

・追記

 昔、中央アジアの砂漠地帯を旅したとき、水の使い方がよくないと叱られたことがあります。極端に水の少ない乾燥地帯では、水の豊富な日本に住んでいては考えられないくらい水を大切にします。両手に水を受けると、それだけで顔を洗い、さらにそれで手から腕まで洗います。われわれは、無造作に手を振って水を切ったりしますが、ご当地では、この動作はもっとも礼儀に外れる行為とされています。それをついうっかりやってしまって、大目玉を食らったのでした。アウトドアでも同様に水は貴重品です。また、無造作に排水を川に流したりすれば、環境汚染となることも忘れてはいけません。

 

●水の確保

 整備されたキャンプ場以外で水を確保しなければならないときは、その水が安全かどうかを確かめる必要があります。見た目は清冽な沢水も、上流に人家や山小屋などがあれば、その汚水が流れ込んで汚染されていると思って間違いありません。上流に人家があるかどうかは、地図で確認する以外に、踏み跡が伸びていないか、電線が先まで伸びていないかといったことで確認しましょう。

 また、岩の窪みにたまったり、流れ込みのない沼のような静水は腐敗したり、雑菌に汚染されている可能性があるので、手を出さないほうがいいでしょう。

 煮沸などの殺菌をせずにそのまま飲める水は、登山地図などに印された湧水だけと考えたほうが無難です。

 安心できる水が確保できなければ、怪しい水を飲用にしなければなりません。これから出かけるフィールドで、そんな水を飲用にしなければならない可能性がある場合は、簡易浄水器や浄水剤を用意しておいたほうがいいでしょう。簡易浄水器は、家庭用のものと同じように、活性炭と中空糸膜などを併用したもので、細菌やバクテリアを除去する能力をもっています。ハンディサイズで携帯に便利な設計になっています。実際に飲用する場合は、浄水器でろ過した水に浄水剤を加え、さらに煮沸するくらいの用心深さが必要です。他に、飲用水を確保するには、雨水を収集したり、エマージェンシーソーラースティルといった方法もあります(サバイバルの項を参照)。

・追記

 生水の危険性は、細菌のほかに、寄生虫や鉱山性の毒物の混入といった場合もあります。。寄生虫で有名なのは、北海道の北キツネが媒介するエキノコックスや東北地方の山に多いツツガムシなど。いずれも動物の糞に混じっていたいたものが、沢の流れに入り込んで、それが感染するといったケースです。いかに清冽に見えても、地表を流れる水には、注意したほうがいいでしょう。また鉱山性の毒物としては、鉛や銅、それに火山性のアルカリ成分などが考えられます。近隣に鉱山や火山がある場合は、注意しなければなりません。また、最近は、山奥に産業廃棄物を違法投棄するケースが増えているので、そんな形跡がないか十分に注意しましょう。上流に人家がなくても、林道が近くにあるような流れの水は注意したほうがいいでしょう。

 浄水器を使えば、確かに安心ですが、それよりも、そのまま飲んでも安全な水を守ることが大切だと思います。

 

●後始末

 汚れたコッヘルや食器は、冷水で水洗いするだけではなかなかきれいにならないものです。キャンプ場では、だいたい食事時間には洗い場が混雑するので、長い時間蛇口を独占してもいられないし、なにより、キャンプ場が整備されているといっても、洗い物の汚水はほとんど環境へ垂れ流し状態ですから、盛大に水を使って洗い物するのも気がひけます。

 食器などの洗浄は、キャンプサイトでできるだけ汚れを落とし、水洗いは最後の仕上げとしたいところです。

 まず、砂や枯れ葉を汚れたコッヘルの中に入れ、それで頑固な汚れを擦り落とします。水洗いで落ちにくい油汚れも、これでけっこう簡単に落とすことができるはずです。もし、砂や枯れ葉は衛生面から使いたくないというのであれば、ティッシュペーパーや新聞紙などでこそげ落としましょう。ちなみに、雪中だったら、コッヘルを逆さにして雪面に押しつけ、グリグリと力を込めて回してやれば、それだけで水洗いも必要ないほど汚れが落ちてしまいます。前にも紹介したように、レトルトを温めるのに使った湯などを残しておけば、それを洗い湯に使えて一石二鳥です。

 最後の仕上げの水洗いでどうしても洗剤を使わないと気が済まないという向きには、生分解性のアウトドア用洗剤の使用をお勧めします。

 また、河原などをキャンプサイトにした場合は、必然的に洗い物を流れの側で行うことになりますが、この場合、汚水を直接川に流すのは厳禁です。少なくとも、流れから2,3m以上の距離をおき、地面に浸透させるようにしましょう。

 

--FOR EXAMPLE--

●オートキャンプの場合

 ここまで説明してきたことは、ほとんどそのままオートキャンプにも当てはまります。ただし、オートキャンプの場合は、持てる荷物の制約がほとんどありませんから、フリーズドライ食品やレトルト食品にさほどこだわらず、生鮮食品もクーラーボックスなどに収納して気軽に運べます。

 オートキャンプの場合は、キャンプサイトに停滞して過ごす時間が長くなり、食事もそれだけ手間をかけることができます。テーブルやストーブなど装備も家庭で使うものにより近いので、調理作業もしやすいはずです。そういったメリットを生かして、ベーシックキャンプよりは少し手のこんだメニューを作ってみたい。キャンプサイトへ向かう途中で、より新鮮な素材を仕入れて、それに合わせてメニューを考えるなんて、フレキシブルなやり方もオートキャンプなら気軽にできるはずです。

 

●ツーバーナーの使い方

 オートキャンプでよく使われているのが、ガソリンのツーバーナーストーブです。このストーブの使用法でも、「しつこいほどポンピングする」というコンパクトストーブのコツがそのままいえますが、注意したいのは、一つのジェネレーターが二つのバーナーに燃料を供給する構造になっていることです。メインバーナーだけを使うときは、サブバーナーのバルブを閉じているので、燃料は100%メインバーナーに供給され、満足のいく火力が得られますが、両方のバーナーを使うと、燃料が二つのバーナーでシェアされるため、火力は低下してしまいます。炒めもののように大火力が必要なときは、メインバーナーだけで調理したほうが効率的です。

 ちなみに、レギュラーガソリンでの使用も可能とされるデュアルフュエルタイプでなくとも、レギュラーガソリン(無鉛)を使用して支障はありません。その点でも、オートキャンプにガソリンストーブという組み合わせは合理的です。

 

●クマ避けのデポ

 登山や探検の世界では「デポ」という言葉がよく使われます。これは英語のデポジットを略した言い方です。「置く」とか「預ける」の意味で、すべての食糧や燃料をパッキングするのが物理的に不可能の場合に、事前に途中のある地点に必要な装備を「置いて」おいたり、あるいは、動物などから食糧を守るために、手の届かない場所に「置く」場合に使われる言葉です。

 ふつうのキャンプレベルでは、途中補給のためのデポはありえませんから、デポが必要なのは、もっぱら動物避けということになります。とくに、クマの出没するキャンプサイトでは、食糧や残飯をクマの手の届かないところにデポする必要があります。スタッフバックなどに食糧をまとめ、匂いが漏れないように、その口をロープでしっかり縛ります。それを高い木の枝にロープを引っかけて吊るせばOK。

 クマは食糧の匂いをかぎつけて来ますから、出没地でキャンプする場合は、残飯を不用意にテントの外に放置しておいたりするのは禁物です。残飯が出たら、かならずまとめて、テントから離れた場所に穴を掘るなどして処理するようにしましょう。

 

 
 

ever

glove

 

 

 


| HOME | TECHNIQUE | IMPRESSION | TOUR | COLUMN | COMMUNITY | OTHER |
| CONCEPT | PROFILE | BBS | MAILING LIST | CONTACT | OBT-SELECT |

SINCE 1997

DIGITAL CONTENTS lab. & Kazunari Uchida All Rights reserved.