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 INDEX // Step1:ベーシックグッズ // Step2:イクイップメント // Step3:ウェアリング // Step4:フットウェア
 Step5:パッキング // Step6:キャンプサイト //  Step7:食事 // Step8:ナイトライフ // Step9:キャンプライフ
 Step10:トレッキング // Step11:サバイバル // Step12:撤収 // Step13:メンテナンス

ファーストエイド

 これは、主にパーティで山登りするときやオートキャンプのときに用意していくファーストエイドキットのフルセット。完全防水のペリカンケースに収納。

 市販のファーストエイドキットを購入し、それを自分なりにアレンジするのがいちばん確実な方法。写真はREIのバックパッカー用キットで、アメリカの長大なトレイルを旅するバックパッカー用なので、各アイテムの量がとても多い。これれなら、適当に間引いてやれば必要十分なセットになる。

 夏場には熱中症対策として使い捨てこーるどパックを用意しておくのもいい。写真はホカロンでお馴染みのロッテ電子工業製の「ヒヤロンスーパー」。約二時間冷却効果が持続する。

 バイカー向けのバンダナやヘッドギアで有名なアメリカのZAN社がリリースする「クールダナ」。これはバンダナに高分子ポリマーが封入してあって、水を含ませておけば、それが少しずつ蒸発して気化熱を奪うというアイデア商品。夏場にはかなり有効だ。

 毒虫や蜂、蛇などに刺されたりかまれたりしたときには、なるべく早く毒を吸い出すのが、症状を悪化させないコツ。ポイズンリムーバーがあれば、かなりの毒を吸い出すことができる。
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 ポリエチレンフィルムの間にアルミシートとグラスファイバーシートをサンドイッチした「オールウェザーブランケット」。350gと軽量ながら、高い保温・断熱性能を持っている。ポリエチレンにアルミを蒸着しただけのエマージェンシーブランケットに比べ、日常的にもグランドシートやタープとしても使えるので非常に便利だ。
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ビーコン

 冬のバックカントリーでは「標準装備」となった雪崩ビーコン。パーティの全員が装備し、雪崩に巻き込まれた際に、難を逃れたメンバーが捜索する。ビーコンが一般に普及し始めてから、雪崩からの精悍率が飛躍的に高まった。写真は有効範囲50mの「 bca トラッカーDTS 」。
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熊避けスプレー

 近年、里でも熊による被害が多くなり、山で熊に遭遇する可能性も高くなっている。パーティを組んでいるときはまだしも、ソロで熊が出没する地域に踏み込む際は熊避けスプレーを用意したほうがいいだろう。「カウンターアソルト」は唐辛子エキスを4m先まで噴霧して、熊の攻撃力を弱めるもの。

 

 

 


 

Step11 : サバイバル

[ INDEX ] 
「あわてず、冷静に」がサバイバルの極意
●フィールドで多い怪我と病気、対処法
1.RICE処置 2.日射病、熱中症 3.酸欠、一酸化炭素中毒 
4.ハイポサミア(低体温症) 5.打撲 6.外傷 7.骨折 8.ショック症状 
9.火傷 10.凍傷 11.毒蛇に噛まれた 
12.ファーストエイドキット 13.水を得る 14.救難信号 15.クマに襲われた 

 

■「あわてず、冷静に」がサバイバルの極意■

 サバイバルが必要なほどのシリアスな状況に陥ったとき、生死を分けるのはパニックを起こさずに沈着冷静な判断が下せるかどうかにかかっています。サバイバルというと何か大げさな技術が必要に思われるかもしれませんが、そのほとんどは、ごく一般的なアウトドア技術の応用にすぎません。その技術と知識を身につけ、つねに気配りをしておけば、万が一の場合でもパニックを防げるのはもちろん、事前に兆候を察知して、サバイバルが必要な状況に陥ることを未然に防げるはずです。

 

●フィールドで多い怪我と病気、その対処法

・RICE処置

 フィールドで多いトラブルといえば、擦り傷や切り傷などの外傷、それに骨折や捻挫などです。これらの怪我には、共通する応急手当(ファーストエイド)の鉄則があります。それは、RICE処置と呼ばれるものです。

 RICEとは、“REST”,“ICE”,“COMPRESSION”,“ELEVATION”という四つの単語の頭文字を取ったものです。

 RESTは、安静にすること。怪我を負ったまま動くと、出血を助長することになります。それを防ぐためと、怪我人がショック症状を起こさないように気を静めるために、まず、安静が必要なのです。ぼくも血には弱いタイプですが、人によっては大量に出血しているのを見ただけで、気を失ってしまうことがあります。場合によってはショック症状だけで死亡してしまうケースもあるのです。

 例えば、頭部に外傷を負った場合、怪我の程度はさほどではないのに、大量に出血することがあります。場所が場所ですし、これは、かなりなショックを受けます。自分が怪我を負ってしまったら、努めて冷静になることを意識して、けしてあせらないことです。あせって、状況をかえって悪化させてしまうということがままあります。怪我を負った人に処置を施す場合は、まず、患者が呼吸しやすいような態勢に寝かせます。そして、濡れたタオルで目を覆うなど、患者が余計な心配をしないように配慮してあげます。

 ICEは、冷やすこと。患部周辺を冷やすことによって、そこの血管を収縮させ、出血や内出血を抑えるのです。とくに、打撲や捻挫、火傷の場合は、なるべく早く、急速に冷やすのが鉄則です。十分なICE処置を行っていれば、症状が軽くなり、後の処置がしやすくなると同時にその効果を高めることにも繋がります。小型のコールドスプレーや袋に衝撃を与えると冷えるコールドパックなどをファーストエイドキットに入れておくと安心です。

 COMPRESSIONは、圧迫すること。これは、外傷を負って出血したときに、とくに重要な処置です。傷があまり大きくなければ、傷口を強く押さえます。傷が大きく、出血も激しい場合は、患部より心臓に近い部分部分の動脈を強く押さえ、幹部への血流を止めてやるわけです。ただし、これは長時間やり続けると押さえている部分以下の組織が壊死を起こしてしまうので、ときどき力を緩めて、血液を流してやる必要があります。また、打撲や捻挫による内出血の場合は、患部を圧迫することで、血液が患部に凝集することを防ぎ、腫れを押さえる効果があります。

 ELEVATIONは、高く持ち上げること。患部を心臓より高く持ち上げて、患部に向かって流れる血流を少なくしてやるのです。

 RICE処置は、以上の処置でワンセットです。怪我を負ったら、なるべくすみやかに、RICE処置を何度か繰り返して行います。そして、RICE処置に合わせて、怪我の状況に合わせた応急処置を施します。

 そして、忘れてならないのは、応急処置は、あくまでも医師の治療を受けるまでの「とりあえず」の処置であるということです。応急処置を施しつつ、なるべく早く、専門の医師の治療を受けなければなりません。また、処置を誤ると、かえって事態を悪化させてしまうことも忘れずに、慎重に行う必要があります。

・日射病、熱中症

 夏、キャンプサイト周辺で帽子もかぶらず活動していたら、夕方になって頭痛がする。重い荷にあえぎながら、それでもみんなについていかなければならないと、無理をしてアップダウンの激しい山道をトレッキングしていたら、急に目眩に襲われた。日射病、熱射病の典型的なケースです。

 体の内部にたまった熱が、汗などの体温調節機能で処理しきれなくなったのがその原因です。そのまま放っておくと、最悪の場合、脱水症状から死に至ることもあります。予防法はとにかく無理をしないこと。とくに頭を直接陽に当てたり、暑いのを我慢し続けたりというのがいちばんいけません。

 もし日射病や熱射病の症状が現れたら、日陰で風通しのいい場所に横になり、シャツのボタンを緩めるなどして、なるべくリラックスさせ、頭や体を冷やし、水分を補給します。

・追記

 根性論が支配していたかつての体育会では、大汗かいてもむやみに水を飲むななんて言われていました。登山でも、「水分を取りすぎるとバテてしまう」というのが定説となっていました。ところが、運動生理の研究が進むと、発汗によって失われた水分は、なるべく早く補填したほうがいいと言われるようになりました。じつは、発汗による脱水が、日射病や熱射病の伏線になっていたのです。そりゃそうです。哺乳類は、体内で生産された余熱を汗によって外部に排出して体温調節をしているわけですから、その熱交換の触媒である水分がなければ、体温が上昇して熱中症になってしまうわけです。といって、一度に水分をたくさんとると、消化器や腎臓などへの負担がかかりすぎますから、少しずつ、幾度にもわけて補給するのがポイントです。最近は、吸収を早めるためにイオン化されたスポーツドリンクなどもありますから、これを活用するといいですね。ちなみに、ぼくのアウトドアでの定番はゲータレードです。人一倍水飲みのぼくは、いつも飲みすぎでバテていたんですが、日本にはじめてゲータレードが入ってきたときにこれを飲んでバテ知らずとなり、それからずっと愛用しています。

・酸欠、一酸化炭素中毒

 通気性の悪いテントの中でストーブを使うのは極めて危険です。

 吐き気や頭痛といった自覚症状が現れたときには、すでに手遅れになっているケースが多いので、くれぐれも換気には気をつけましょう。テント内でストーブを使っていて、息苦しさを感じたりしたら、ただちにストーブを消し、テントのゲートをいっぱいに開けて換気をします。さらに衣類を緩めて、安静にすること。酸欠の場合などは、突然呼吸停止したりする場合があるので、そんなときには、傍らにいる人がただちに人工呼吸を施さなければなりません。*STEP8の"一酸化炭素中毒に注意"の項も参照してください。

・追記

 その昔、冬の早池峰山麓でオフロードバイクに乗ろうと出かけていったとき、あまりにも寒くて、テントを張る気力も起きず、トランスポーターの中でキャンプ?したことがありました。「寒いときは鍋に限る」なんて、ワンボックスの荷室で男三人鍋を囲んでおりました。そのうち、なんだか意識が朦朧としてきて、目が霞んできました。ハッと気づいた一人が、バックハッチを開けると、スーッと視界が開け……。油断大敵です。通気性能の悪いテントの中で煮炊きしたのと同じ状況だったわけです。ワンボックスの荷室で鍋物なんて論外ですが(それを実践していた本人が言えた義理ではありませんけど)、テントはくれぐれも信頼できるメーカーのものを選びましょう。半端な入門書には、テント内でストーブやランタンは絶対に使ってはならない書いてありますが、これはナンセンス。雨や雪に吹き込められたら、たんと内で調理する以外にありません。STEP1でも紹介したように、きちんとしたメーカーのテントであれば、天候不順で停滞しているときにテント内で調理することも考慮して、喚起性能が計算されています(サイドウォール上部に開閉できるベンチレーターが取り付けられていたします)。ぼくも、ごく当たり前のように、テント内で煮炊きします。ただし、テント内でストーブを倒したりすると、火災の危険がありますから、火の元には十分注意してください。

・ハイポサミア(低体温症)

 体温が急激に低下して、動けなくなり、最悪の場合死に至る。それがハイポサミア(低体温症)です。低温時のトラブルとしては、まず凍傷が思い浮かびますが、凍傷が冬山のような特殊な環境下で起こるのに対して、ハイポサミアはその前段階で起こりうるし、冬山のように極低温でなくとも、例えば、夏山で雨に打たれ風に吹かれただけでも起こりえます。冬になると、酔っぱらいが街頭で寝てしまって凍死したなんてニュースが流れますが、これなどは典型的なハイポサミアといえます。

 STEP3のウェアリングの項でも説明したように、外気温はさほど低くなくても、風の影響で体感温度は意外に低くなっていることがあります(風速 1m/sで体感温度は1℃下がるといわれます)。夏山だからと安心していて、雨や汗で衣類が濡れたのを気にせず、強風に当たっているうちに、突然動けなくなってしまう。ハイポサミアの怖いところは、知らず知らずのうちに最悪の状況まで追いつめられてしまうことです。

 ハイポサミアは、寒さを感じないように、ウェアリングに気をつけていることで防げます。

 万が一ハイポサミアになったときは、とにかく暖かくすることが先決です。肌を強く擦って血行を促してやることも有効です。

・追記

 冬山で飲料水がなくなり、雪を口に入れて乾きを癒しているうちにハイポサミアになってしまったという例もあります。冷たい飲み物も体温を奪うので、寒い季節には、できるだけ温かい飲み物を取るようにしましょう。ぼくは、冬のトレッキングなどのときには、サーモスの魔法瓶に砂糖をたっぷり入れた紅茶を満たして行きます。冷え切った体に、一杯の熱い紅茶は格別です。

・打撲

 手足の打撲なら、外傷や骨折がないことを確認し、患部を冷やして処置します。とくに、早い段階で処置をしておけば症状が軽く済むので、患部を瞬間的に冷やすコールドスプレーやコールドパックをファーストエイドキットに入れておくと便利です。コールドスプレーは、サッカーや野球の試合などで、打撲した選手にトレーナーがシュッと吹きかけるあのスプレーですね。大きなパーティでトレッキングに行くときに共同のファーストエイドの中に一本いれておくといいでしょう。コールドパックは、100円懐炉と同じように揉んだり叩いたりすると冷えるパックです。ソロの場合でも、これを一つ用意していけば、急な発熱などにも対処できるので便利です。

 打撲で深刻なのは、問題なのは、頭部や腹、背中などを強打したときです。意識の混濁や嘔吐、手足の麻痺などがある場合は、脳や内臓の損傷が考えられるので、緊急に医療機関へ収容しなければなりません。こんな症状が見られる場合は、患者をその場で動かさず、保温して、呼吸の楽な姿勢で寝かせ、急いで救助を要請します。その場では症状がない場合でも、後で症状が現れる場合がありますから、頭や腹、背中を強打した際には、1日は安静にして経過を見ることが必要です。不安があれば、やはり早期に医療機関で診察を受けたほうがいい。

・外傷

 外傷の手当は、出血をおさえること(止血)と、二次感染を防ぐために傷口を清潔にすることの二点が重要です。

 まずは、傷口とそのまわりをきれいな水や消毒薬で十分に洗浄します。その上にガーゼや清潔な布を当て、しばらく圧迫をくわえます。傷が深くなければ、これだけでほとんど出血は止まるはずです。出血が止まったら、化膿予防に抗生物質を配合した軟膏などを塗り、バンドエイドや包帯で患部を保護します。

 もし圧迫するだけでは止血できなければ、傷口より心臓に近い部分を止血帯(ロープや布など縛れるものならなんでもOK)で縛l、患部を心臓より高い位置に保ちます。この状態で安静にし、救助を要請します。この方法を取る場合は、止血した先の細胞の壊死を防ぐために、止血帯を30分おきくらいに緩めるて、血液をある程度循環させてやる必要があります。

 頭部に傷を負うと、たいした傷でもないのに大量に出血することがあります。こんなときは、焦らず、患部に包帯を巻いて上から圧迫していれば、ほとんどの場合はすぐに止血できるはずです(ただし強い打撲で、脳へのダメージが考えられる場合は、強く圧迫してはいけません)。

・骨折

 骨折をしたときは、その箇所の前後の関節から動かせなくなるほどの激痛をともなうか、もしくは感覚がなくなってしまいます。

 骨折の場合は患部での内出血を防ぐために、まず冷やし、さらに患部が動かないように副木を当てて固定してやります。骨が皮膚を突き破って飛び出した開放性骨折の場合は、最初に傷の処置をしてから、骨折の処置をしなければなりません。

 副木は骨折した部位の前後の関節を含めて固定するのがセオリー。副木には、枝やポール、ストック、厚紙、身近にあるものを利用します。もし、直接副木を結びつけるのが痛ければ、テントマットや衣類をクッションに利用するといいでしょう。

 また、骨折の際は、ショック症状をともなうことが多いので、その処置も同時に行う必要があります。

・ショック症状

 外傷が大きかったり、病気の症状が突然現れたりしたときに、それが精神的なストレスとなって、ショック状態に陥ることがあります。顔面蒼白で、手足が冷たくなる。冷や汗をかき、吐き気に襲われる。呼吸と脈が早くなる。といった症状が典型です。「血を見たぐらいで貧血を起こして、だらしない奴」なんて、高を括るのは禁物です。ショック状態から意識混濁に陥り、命を落とすことだってあるのです。

 ショック症状を押さえるためには、とにかく、傷や病気のことを深刻に考えないこと、考えさせないことが大切です。まず、患者をリラックスさせること。衣服を緩め、毛布などで保温します。内蔵へのダメージの心配がなければ、水、あるいは気付けの酒などを小量口に含ませるのも効果があります。

・火傷

 キャンプ中の怪我でもっとも多いのは火傷です。熱いストーブや火のついた薪にうっかり素手で触れてしまった。あるいは、グツグツ煮えたコッヘルのスープをひっくりかえしてしまった、といったケースですね。

 火傷の応急手当は、とにかく冷やすこと、これに尽きます。患部を流水に浸し、感覚が麻痺するぐらいまで徹底的に冷やす。冷たい流水がなければ、コールドスプレーやコールドパックを患部に当てる。この処置がすばやく行えれば、火傷の程度をだいぶ軽くすることができます。

 患部を十分冷やして、炎症などが広がる様子がなければ、化膿止めの抗生物質配合の軟膏を塗り、包帯などで患部を保護します。

 靴ズレも火傷の一種で、マメは火膨れと同じ。これも冷やすのが最善の処置ですが、トレッキングの途中では不可能です。そんなときは、消毒した針やナイフの先でマメを突いて、滲出液を抜いてしまい、軟膏やヨードチンキなどで処置した上に、バンドエイドなどで保護するといいでしょう。マメはなるべく潰さないようにとした解説書もありますが、ぼくの経験では、潰して滲出液を出してしまったほうが回復が早いように思えます。

・追記

 ぼくも何度かひどい靴擦れになって、縦走中に苦しんだりしたことがあります。まず大切なのは、自分の足に合った靴を履くことです。ぼくは、ハードな登山をしたり長時間ラフロードを歩くときには、自分の足に合わせてオーダーした靴を履いています。もっとも、それは、僕の足が靴屋さんが驚くほどの偏平甲高で、既成のもので合うのが見つからないためです。でも、オーダーシューズを履いていても、シューレースの結び直しを怠ったり、小石が入ったような異物感を感じたのに横着してそのままにしていたりすると、マメができる羽目になります。とくに、皮靴のように通気性が悪い靴の場合は、大休止のときに靴を緩めて通気してやったり、汗で濡れた靴下を換えたりをこまめにしたほうが無難です。

・凍傷

 凍傷は、冬山などの寒冷地で、抹消の血管への血流が悪くなるために起こります。顔や手は、寒さを覚えたときに擦って血行を回復してやれば凍傷を予防することができますが、問題は足指です。ときどきシューレース(靴紐)を緩めたり、靴の中で意識的に足指を動かすなどして、血行を回復してやらなければいけません。

 凍傷の初期は、患部が白くなって、疼くような痛みを覚えます。この段階で、ぬるま湯につけたり、体温が戻るまで入念にマッサージするなどの処置を施せばほとんど大事に至ることはありません。さらに症状が進むと、火傷のような水泡ができます。さらに悪化すると、患部が黒く変色して壊疽を起こしてしまいます。水泡のできる2度以上の凍傷を負ってしまったら、患部を消毒して包帯などで保護し、医療機関で治療を受けなければなりません。

・毒蛇にかまれた

 北海道から本州、四国九州にかけてはマムシ、ヤマカガシ、九州の一部島嶼部ではさらにハブという毒蛇が生息しています。ふつう蛇類は振動に敏感なので、人間が近づけば歩くときの振動を感知して逃げてしまい、まれに出くわしても、こちらから刺激しなければ襲ってくることは滅多にありません。

 ですが、彼らの縄張りに踏み込んだり、互いに気づかずに蛇を脅してしまったような場合、彼らは恐ろしいスピードで襲ってきます。万一噛まれてしまった場合は、まず、外傷の際の間接止血法と同様に、傷口より心臓に近い部分を紐などで止血し、静脈血が心臓に回るのを防ぐようにします。さらに、ポイズンリムーバーやスネークバイトキット(いずれも注射器のような毒を吸い出す器具)を傷口に当てて、なるべくたくさんの毒を吸い出します。もし、そういった器具がなければ口で吸い出さなければならなりません。さらに、コールドパックなどがあれば患部の周囲を冷やして血流を阻害し、一刻も早く医療機関で血清治療を受ける必要があります。

・ファーストエイドキット

 アウトドアでの予期せぬ病気や怪我に備えるために、ファーストエイドキットは必ず用意しておかなければなりません。STEP2でも紹介したように、登山用品店など売られている、バンドエイドや包帯、軟膏、折り畳み式のハサミなどがコンパクトな防水ケースなどにセットになったものをベースに、持病薬など必要なものを補填すればいいでしょう。

 ちなみに、ぼくのファーストエイドキットの中身を紹介してみます。

 まず、ケースは防水パッキンのしっかりした小型のペリカンケース。医薬品を湿気からしっかりガードします。

 ぼくは肘と膝に神経痛が出やすいので、そのときのために肘と膝兼用のサポーターを入れています。これは外傷を処置した後、その上にすっぽりかけてカードとしても使います。傷当てパットは傷の大きさに合わせてカットしてつかう消毒ガーゼ。テーピングテープ、バンドエイド、軟膏や消毒薬を塗るための綿棒、ふつうの石鹸に比べて消毒作用の強い逆性石鹸、消毒薬(マキロン)、そして瞬間接着剤といったものを外傷の処置用入れています。瞬間接着剤は大な傷を負ったとき、縫い合わせるかわりにこれで傷口を接着して応急手当してしまうという少々乱暴な用途がありますが、幸いにしてそんな使い方をしたことはまだありません(たてつけの悪い義歯が外れたときにこれで貼り付けてしまうといった使い方は度々しています(^_^;))。

 高山は紫外線が強いので、日焼け予防のローションとスキンクリーム。さらに内服薬として、正露丸、葛根湯、アスピリン、抗生物質といったものを用意しています

 それから、折り畳み式ハサミに、長い山行の折には爪切り、ざっとこんなところが、ぼくのファーストエイドキットの内容です。

 包帯が入っていないのがおかしいと思われる方がいるかもしれませんが、処置した後の活動で包帯だと緩んで外れることが多いため、代用としてテーピングテープを使っています。傷当てパットをかぶせて、それをテーピングテープで固定し、その上からサポーターでガードすれば、大きな動きで緩んでしまうこともありません。テーピングテープは、その他、骨折の際に副木を固定するテープに使ったりします(細引きもそのような場合の固定具とします)。

 また、鉢巻にする大きめのバンダナは、いつも2、3枚用意していきますが、これは三角巾代わりにも使用します。

 

●水を得る

 人は、食糧がなくても数週間は生きのびられますが、水がなくては数日ともちこたえることができません。

 水に恵まれた日本のフィールドでは、どんなに山奥でも、少なくとも半日も歩けば、小さな沢くらいには出くわすはずです。問題は、怪我などで身動きできず、水が尽きたときです。たとえば、ふだん人が通る登山道やトレールから大きく外れた場所に踏み入って、そこでトラブルに遭って動けなくなったとき、生き延びるために、手近なものを利用して、水を得なければなりません。

 運良く雨が降れば、フライシートや雨具を利用して水を集めます。フライシートや周囲の葉に結露した朝露や夜露も根気良く集めれば、一日の乾きを凌ぐくらいの量にはなります。問題は、これらの方法でも、十分な水を得られないときです。

 いろいろなサバイバルマニュアルや登山教本で紹介されているのは、米軍の公式サバイバルマニュアルに掲載されている『エマージェンシー・ソーラー・スティル(非常時太陽熱蒸留装置)』と呼ばれる方法です。必要なのは、一辺が1.5mほどの薄手のビニールシートが一枚、これだけです。まず、地面に直径 1m、深さ30cmほどの穴を掘り、その中心に水を受けるためのカップを置きます。そして、穴を覆うように透明なビニールシートを張って、その中心を窪ませれば出来上がり。太陽熱によって、穴の中が温められ、蒸発した水分がビニールシートに結露し、それが中央に向かって流れ集まり、穴の底におかれたカップにたまるという仕掛けです。ぼくは、これを実際に試したことはありませんが、アメリカの極度に乾燥した砂漠地帯でも、半日で200-500ccの水を集めることができるということですから、日本ではもっと効率がいいでしょう。この装置で集めた水なら、ビニールシートさえ清潔なら、蒸留水に近い安全な水であることです。手近にある木の葉を穴の中に入れたり、小用をそこで足せば、より得られる水の量は多くなるでしょう。ちなみに、この方法は、"The Complete Walker(邦題『遊歩大全』)"で、著者のコリン・フレッチャーが実際に試みています。それによると、なるべく薄手で透明のビニールシートで試みるのが集められる水の量が多いそうです。色つきのシートだと、太陽光が穴の中に十分に射し込まず、水の蒸発量が少ないようです。この方法の唯一の欠点は、地面が掘りやすい土でないといけないこと。それから、太陽光の少ない曇天では、効率が悪いことです。

・追記

 昔、東北の栗駒山へ幻の湿原を探す目的で入り、遭難しかけたことがありました。ふつうの登山コースは、駐車場から頂上まで30〜40分のどちらかというとお手軽なハイキングコースのような山なので、どこかに油断があったのだと思います。ぼくを含めた5人ほどのパーティで、登山道の取り付きではなく、そのずっと手前に車を止め、トレースのない原生林の中に分け入っていきました。コンパスと2.5万分の1地形図を頼りに当たりをつけておいた湿原を目指して進んだのですが、鬱蒼とした原生林の中は視界もほとんど利かず、徐々にあらぬ方向へ。南東へ向かえば車道に出られると軽く考えていたのも災いして、方向を見失ったと気づいたときには、すでに夕闇が迫っていました。みんなろくに食料も持たず、水はそれぞれのメンバーがカンティーン一本だけという状態で、すでにその水もなくなっていました。喉はカラカラで、次第に朦朧としてきました。

 日も完全に落ちて、あたりは闇。ぼくたちは、その場でのビバークすることにしました。

 でも、それまでに歩き回って体内の水分を相当に失っていたはずで、ひどい乾きに襲われ続けます。周囲に沢はなさそうだし、木の葉を噛んでも、乾きが癒されるどころか、よけいに水が欲しくなって喉がひきつります。このとき、乾きは判断力を低下させることを痛感しました。

 運良く、夜半に雨が振り出し、それをシートに受けて、代わる代わるシェラカップですくって飲みました。このときの雨水の味は忘れられません。

 翌日は、みんな冷静になって、自分たちが昨日辿ったトレースをわりだし、無事に車まで戻ることができました。後で考えると、乾きの中でぼくたちは、完全に判断力を失って、車道とはまったく反対の方向へ進んでいたのです。

 

●救難信号

 万が一、フィールドで遭難という状況に陥ってしまい、自力での脱出が困難となったら、救助を期待するしかありません。そうなったら、いかに早く救助してもらうかが課題となります。そのためには、まず、捜索隊に自分たちの位置や状況をアピールしなければなりません。

 エマージェンシーホイッスルを鳴らして自分の居場所をアピールする、シグナルミラーで相手に合図を送る、目立つウェアを振ってアピールする、あるいは木や石を並べて航空機にむかって合図を送るなどの方法が考えられます。それぞれ、自分の置かれた状況にいちばんあった方法を選ぶことが重要です。日本では信号弾の陸地での使用は見とめられていませんが、ぼくは海外のフィールドに出かけるときは、ペンシル型の信号弾を用意します。これに代わるものとしては、焚火の煙(狼煙)があります。夜間なら、救難信号用のフラッシュライト(カメラのフラッシュと同じようなもので、断続的に発光する光りが2、3km先まで届く)やコンサート会場でおなじみの発光スティック(サイリウム)などがあります。それらは、アウトドアショップで手に入れることができます。なお、木の枝や石などを並べて特定の意味を伝える救難信号が国際規約で定められているので、その代表的なのを覚えておいてもいいでしょう。

・追記

 装備の項で、アメリカでは、たいしたトラブルでもないのに、携帯電話で気軽に救助要請するケースが増えていると紹介しましたが、日本でも同様なケースが急増しているそうです。

 登山者が動けなくなったという連絡で、救助隊がヘリを飛ばして駆けつけたら、ちょっと足をひねっただけの人が、山小屋のすぐ近くから電話していたとか、風邪っぽいのを無理して山に入り、熱が出てだるくなったので救助を要請したとか。

 一刻を争うシリアスな事態に陥っている遭難者が、こういったモラルのない人間のせいで救助される機会を失って、命を落としてしまったら、やりきれませんね(実際、ちょっと下痢をしただけなのに救難ヘリを要請した登山者がいて、そちらに対応している間に、べつなところで岩場から転落して救助を待っていた登山者が亡くなってしまったという例もあります)。アウトドアに踏み込むということは、街で普通に生活しているのとは違って、それなりのリスクを覚悟するということですから、自分が本当に救助が必要な状態なのか、きちんと判断できるだけのモラルは身につけていたいものです。

・追記

 本格的な登山を行う場合は、事前に各自治体や所轄の警察宛に『登山計画書』を郵送などの方法で提出することが奨励されています。また、登山道の起点には、『登山者カード』や『入山カード』と、それを投函するポストが設置されています。カードには、自分が入山する日時や目的地、予定コース、下山予定日などを書きこむようになっています。救助隊は、それらの資料があれば、それをもとに捜索コースなどを絞り込んで、効率的に捜索が行え、結果的に救助が早まることになります。何日もトレースの少ない山域に入る場合は『登山計画書』を提出し、入山するときはカードに必要事項を記入する習慣をつけておきましょう。

 

●クマに襲われた!!

 山奥にまで開発が進んだため、今までは接近遭遇する危険が少なかった野生動物と計らずして出くわしてしまうことも多くなっています。とくに、クマの出没地域でキャンプするときは注意が必要です。

 以前、東北の山奥でキャンプしたときに、残飯をテントの前に放り出したまま眠ってしまい、明け方クマの訪問を受けてしまったことがありました。幸い、このときは30分あまりで残飯あさりに飽きたクマはそそくさと帰ってしまったので、事なきを得ましたが……。残飯をそのままにしておくなどというのは、わざわざ動物を呼び寄せるようなもの(SETP7の『クマ避けのデポ』では、当の本人が食料や残飯は野生動物を招き寄せてしまうのできちんと処理しなければいけないと解説しながら、まったくお恥ずかしい例です。でも、この事件以降このセオリーはしっかり守っています)。

 ふつう野生動物は、人間よりも先に気配を察知して姿を隠してしまいます。だから、こちらがいることをアピールしていれば、万が一の出会い頭という事態が避けられるはずです。クマの出没地域に入るときは、クマ避けの鈴をザックにつけておきましょう。よく、山菜とりの人が、クマが潜んでいそうな気配を感じると爆竹を鳴らして威嚇しますが(音とともに硝煙の匂いをクマが本能的に嫌がるという説があります)、これは山火事の危険があるので、あまりお勧めできません。

 そして、不幸にして、出会ってしまったら、とにかく焦らないことが肝要です。背中を見せて逃げ出したら、間違いなく襲われて致命傷を負わされることになります。なにしろ相手は時速50kmは出せる足を持っているのですから、逃げ切ることは不可能だし、木登りも人間よりはるかに上手です。

 不幸にも出くわしてしまったら、まずは、相手の目をにらみ、動かぬこと。もし、しばらく我慢しても相手が逃げる気配がなければ、ゆっくりとザックを足元に置いて、後ずさりして逃げるといいといわれます。クマは好奇心が強いので、ザックに気をとられて、後を追うのを忘れてしまうのだとか……。

 実効があると言われるのは、クマは蛇が嫌いなのでベルトを外して振り回すという方法や、唐辛子エキスを主成分としたクマ避けのスプレーを使うこと。また、クマはインセクトリペレント(虫避けの塗り薬やスプレー)の匂いが嫌いなので、これを塗っていると近づいてこないといった説もあります。いずれにせよ、間近ではお目にかかりたくない動物ですね。

 

 
 

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