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Step12 : 撤収 |
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[ INDEX ]
1.キャンプの絶対条件 2.原状復帰 3.ゴミの処理 4.テントの撤収
5.シュラフ 6.雨の日の撤収
■キャンプの絶対条件■
「飛ぶ鳥後を濁さず」とは、キャンプの現場でこそ肝に銘じておかなければいけない格言です。昨今の、キャンプ場のゴミ捨て場を覗くと、これが、仮にも自然を楽しみに来ているという人たちのしたことなのかと、暗澹とした気持ちにさせられます。
ここに無造作にゴミを捨てる人たちは、「自分の目に入らない自然ならどんなに汚れていても気にならない」、「自分の家の中だけきれいなら、まわりの環境なんてどうだっていい」といった最低のメンタリティしか持ち合わせていないのではないかと思います。
キャンプの絶対条件は昔も今も変わりありません。それは、"原状復帰"です。本来、キャンプは生態系を乱さないために、撤収の際にはその痕跡をまったく残さないようにすることが鉄則なのです。もちろん、ゴミ捨て場の完備したキャンプ場でも、痕跡はミニマムに押さえるのが鉄則です。
●原状復帰
オートキャンプブーム以降、キャンプ場のゴミ捨て場や里を徘徊するタヌキやキツネなどの野生動物が多くなったといいます。山が切り開かれ、住処やエサ場を奪われたこれらの動物たちが、手近なところでかっこうのエサ場を見つけ、馴染んでしまったのです。動物写真家の宮崎学さんが著書『野生に生きる』(1992年 毎日新聞社)の中で紹介していますが、巣作りにプラスチックゴミを使う"文明化"された動物が出てきたと思ったら、今度はガンなどの"文明病"が動物界で流行り始めたとか。生態系が狂うとは、まさにそういうことなのです。
もちろんそのことが、キャンパーのみの責任であるはずはなく、人間社会全体の責任であるわけですが、残飯やゴミを無造作に捨てる、あるいはあたりかまわずRVを乗り回す心ないキャンパーがその一翼を担っていることは間違いありません。
生態系への影響をミニマムに押さえるため、それに後から来るキャンパーへのマナーとして、キャンプを撤収する際は、原状復帰を徹底しましょう。焚火をしたら、跡は均して痕跡を消します。ゴミはまとめて持ち帰る(たとえゴミ捨て場があっても、持ち帰りが鉄則)。もしRVなどで地盤を痛めたなら、それを修復するくらいの気遣いも必要です。
・追記
ぼくは、整備されたキャンプ場ではなく、オープンフィールドでキャンプすることが多いので、原状復帰にはとくに気をつかっています。
たき火をしたら、燃えあとの炭を均し、テントを張るために石などを動かしたら、元の位置に戻しておきます。
自分でも度々経験することですが、なるべく人の入っていない場所で自然と一体となったキャンプをしたいと思って、山深く分け入ると、先客が残していったゴミの山に出くわしたりすると、それだけでもう気分が台無しですからね。そういう場所では、どうも、人目につかないからゴミを放置してもいいやといった心理が働くようです。案外、深山に分け入るハンターや釣り師、登山者の中にも原状復帰ということに関して無頓着な人が多いのは考えものですね。
●ゴミの処理
先にゴミは持ち帰ることと書きましたが、とくにオートキャンプでは、豪華な食事用に仕入れてきた生ものなどのゴミは、そのままでは汁が漏れて車を汚したり臭気があって、ついキャンプ場のゴミ捨て場へポイッとやりたくなってしまうものです。でも、こういったゴミがいちばん生態系を乱しやすいもの。これらは、キャンプしている時点で、後の処理のことを考えて、なるべく脱水してカサを減らすようにしましょう。
たとえば、調理の際に出る野菜クズや魚の内蔵などは、いきなりゴミ袋に放り込むのではなく、ザルやネットに捨てて水切りし、焚火がおき火になったときにくべて完全に水分を飛ばしてしまいます。そうして脱水したゴミならば、汁も臭気もないし、カサが少なくて処理が簡単なはずです。
でも、何といっても最良の方法は、はじめからゴミが出ないように食糧計画を立てることです。余分なパッケージはあらかじめ外し、生ものは出発前に下ごしらえすればほとんどゴミは出ないはずです。
余談ですが、ビールや清涼飲料水のアルミ製の缶は燃えることをご存知でしょうか? 資源の再利用という観点からはあまりお勧めできませんが、火勢の強い焚火に空き缶を放り込むと、30分もしないうちに跡形もなくなってしまうのです。
・追記
アルミ缶が燃えるなんて、軽率に書いてしまいましたが、気化したアルミや塗料の化学合成成分による汚染のことを考えたら言語道断な行為ですね。このアルミ缶焼却は、登山の世界では、ずっと無頓着に行われてきたのですが、環境ホルモン汚染なども問題となっている御時世に、まさに悪しき風習といえます。
缶だろうがなんだろうが、ゴミは必ず持ち帰るという習慣をつけなければいけませんね。そして、持ち帰ったゴミも、ちゃんと分別して出さなければ……。昔は、中央線で山から帰ってくると、一まとめにしたゴミを新宿駅のくずかごにそのままほうり込んだりしましたが、今は、ちゃんと自宅に持ちかえって、分別して出しています。
余談ですが、最近、渋谷区のほうに仕事場を移したのですが、こちらは、ゴミの回収は、「燃えるゴミ」と「燃えないゴミ」の二種類しかなくて、「燃えないゴミ」のほうは、カンもビンもプラスチックも全て一緒になっています。自宅のある調布市では、ビンとカンはそれぞれ資源ゴミとして、洗浄したものをきちんと分けて出さないと回収してくれませんしは、古紙なども資源ゴミとして「燃えるゴミ」とは別に回収されています。ふだん、コミュニティのみんながゴミについて気を使っているのに、ほかのコミュニティがこんな状態では、いったい自分たちは何をしていのだろうと、がっかりしてしまいます。「ファッションの街原宿」だとか「キラー通り」だとか「ブラームスの小道」だとか気どってみたところで、その裏ではゴミは捨て放題というのではねえ……。
●テントの撤収
テントのような大物の装備は、帰宅してから広げて手入れするのはなかなか大変です。そこで、基本的な手入れは現場でしてしまうのが賢いやり方です。
まずテントの中を整理してフライシートを外し、本体を陽にあてて内部を十分に乾かします。フライシートのほうも物干しロープに広げて吊るすなどして表裏を十分に乾かします。汚れている部分は、濡らした布で拭きます。
テントが乾いたら、中を掃除します。今のセルフスタンディング式のテントなら、ペグを外してそのままテント本体を持ち上げて逆さにするだけで、細かいゴミを捨てることができます。このとき、ついでにそのままひっくり返して陽に当てて、グランドシートの裏も乾かしてしまいましょう。このとき、風で飛ばされないように注意してください。
テントを使う機会があまりないようなら、このとき、徹底的に乾かしてしまいましょう。少しでも湿気が残っていると、生地がカビてしまい、次のキャンプで不快な思いをすることになります。
●シュラフ
人間は睡眠中にも大量の汗をかきます。シュラフのインシュレーター(中綿)はその大部分を吸っているので、そのままにしておくとカビなどが発生して不衛生です。また、湿気たままにしておくと、インシュレーターの復原力が低下して保温性のポイントとなるロフト(厚み)が減ってしまうことにもなります。朝起きて、晴れていれば、なにはともあれ、真っ先にシュラフを陽の当たるところに干しましょう。とくにダウンをインシュレーターにしているシュラフは、湿気による性能低下が著しいので、十分に乾かしてから収納するようにしましょう。
●雨の日の撤収
キャンプでいちばん憂鬱なのは、やっぱり雨の日の撤収ですね。
晴れるまで停滞をきめこみ、シュラフに包まって読書三昧なんて余裕があればいちばんいいのですが、今時、学生諸君だって何かと予定が詰まっていてキャンプ地に張り付いているなんてままならないもの。
雨の中で撤収しなければならないとき、心にとめておかねばならないのは、装備をなるべく濡らさないことです。濡らせば濡らしただけ後のメンテナンスがたいへんになります。
ポイントは、テントの内部で装備のほとんどをパッキングしてしまうこと。最終的に、テントを畳めばいいというところまでテント内で準備してしまうわけです。
パッキングが終わったら、雨具を着て、シューズを履き、雨の降る外へ。
そして、ザックをなるべく雨のかからない岩陰などに置きます。このとき、必ずザックの本体側を上にすること。亀をひっくり返したようにハーネス側を上に向けると、こちら側は防水処理が施されていないので、背負ったときに背中に濡れたコケを当てたような不快感を味わう羽目になります。
フライシートは防水処理されているので、後でバサバサと水を払えばいいのですが、問題はテント本体。テント内を濡らすととくに面倒なので、ゲートやベンチレーターをしっかり閉じてから作業を行います。本来は、テントを畳むときはゲートを閉じていると中の空気が逃げにくく、作業し難いのですが、雨の中での撤収では、そのセオリーは無視します。テントを畳むのはとにかくスピード勝負です。このさい折り目がどうのこうのなんてことは考えず、空気をはらんで畳み難いところを無理にでも畳んで、素早く収納袋に突っ込んでしまいます。最後にフライシートの水を払って、ザックにくくりつけたら、後はさっさと尻尾を巻いて退散しましょう!
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